強風
風が強く吹いている。
いま住んでいるところはマンションの四階で、北側が共用通路になっており、この記事はその共用通路に面した部屋で書いている。
この建物は北側が常に風が強い。建物の構造、周辺環境との位置関係によるものだと思う。
そのため窓に手を当てると隙間風を感じる。
まあ隙間風ぐらいなら大目に見るのだが、困るのは砂だ。都会とは呼べない場所に住んでいるので、周りには舗装されていない土地も多く、風が強い日は砂が飛んでくる。これがまあまあの量がある。
砂が屋内まで吹き込んだら嫌だな、という思想から普段はカーテンを引きっぱなしにしている。
そのせいであまり窓の周辺を観察することがないため、ときおりカーテンを開けると、窓枠にごっそりたまった砂に驚く。
しかも、窓の隙間から屋内に入ってこられるのは砂の中でも粒子の細かいものだけだ。ごっそりたまった砂はすべてがさらさらで、ふるいにかけられたように粒が均一。「これで砂団子を作れば楽しかろう」と思うが、そんなもん二十も半ばになった無職が作っていたら通報されてしまう。
だから掃除をするわけだが、粒子の細かい砂というやつは掃除も難しい。
ほうきではくと簡単に舞い上がって室内に拡散するし、ふきんでふくと染み込むので面倒かつ布の消耗が早く、掃除機で吸えば機械の内部が汚れる。
そこで、なんとか砂を減らせないもんかと、「隙間テープ」なるものを購入した。
窓と窓の重なる部分に張る、長さ5mmの毛がびっしり並んだテープだ。この毛で隙間を塞ぎ、砂の侵入を防ぐというわけである。
だが窓と窓の間の隙間なんて5mmもない。1~2mmである。
だから考えなしにテープを張った私は、閉まらなくなった窓を前に途方に暮れた。
はがすのは駄目になるから勿体ないし、なにより他に砂の対処策がない。
困った私は、最終的にバリカンで毛を剃った。普段は自分の髪を剃るのに使っているやつである。
当然、フリーハンドでの作業になるので、毛の長さは不ぞろいになる。場所によっては効果がなくなるレベルで短くもなる。
だがとにかく窓は閉まった。
効果のほどは経過観察で検証するしかないのだが、いざ対策を打つと、結果が気になってカーテンを頻繁に開けるようになった。実験結果の信ぴょう性がなくなる可能性があるので我慢するのだが、やっぱり気になって見てしまう。
とりあえず、隙間風の音はしなくなった。