マンバン

 前回の更新が四月二十四日なので、およそ一ヶ月半ぶりの更新である。

 何をしていたかというと無職生活を満喫していた。小説を読み、書き、映画を観て、ゲームをする。寝たいときに寝て起きたいときに起きる。運動はしていない。

 引きこもりには才能がいるという。

 おれには才能がある。ネットフリックスで映画を選んでいるときなど特にそう思う。選ぶのは人生が有限だからだ。無限なら左から順に観る。でもネットフリックスの映画の総再生時間はおれの人生より長いのだ。選ばないと面白いのを見逃す。選んでも面白いのを見逃す。人生は短い。

 髪が伸びた。切る気はない。ある程度の長さまで伸びると、全部引っ張って頭のうしろでまとめれば整髪する必要がないので、むしろ楽だ。このヘアスタイルはマンバンという名前らしい。ググって知った。知らない言葉は山ほどある。知らないことだらけだ。全知に至るには人生は短すぎる。

 備忘録として最近見た映画の一部(全部はもう思い出せない)の記録を以下に。

  

『カンパニー・メン』

 リーマンショック後のアメリカにおける失業者の実情を描いた物語。主演は『ゴーン・ガール』『グッド・ウィル・ハンティング』のベン・アフレック。

 無職のときに見てよかった。没入感が違う。

 結局のところ、選ばなければ仕事はある。おれは前職が3K仕事だったので、そういう意味では先のことはあまり気にしていない。鼠の死骸やウンコの山、自由にトイレに行けない環境、そんな連中と友達だったやつはそう多くない。でも世の中にはそういう汚れ仕事を引き受けるやつが必要で、いつも人を募集している。

 ベン・アフレックの特徴的……というか象徴的な仕草の一つが、両手を広げた立ち姿だ。

 そのポーズには『グッド・ウィル・ハンティング』でウィルを見送った時の爽快感が籠っている。この映画でも見られる。このために選ばれたんじゃないかと思うほど、いいシーンだ。

 

『パシフィック・リム』

 怪獣をKAIJUというアメリカ映画。あふれる特撮愛。

 エンタメってのはこういうものさ、というお手本のような作品。頭を空っぽにして観るのが礼儀だ。ポップコーンとコーラを準備しろ。最高の体験ができる。

 

『スーパーサイズ・ミー』

 マクドナルドだけで一か月生活したらどうなるか? というドキュメンタリー映画。

 肥満体国アメリカだからこそ生まれた意欲作。編集が上手すぎてどこから観ても面白い。途中から観ても面白いし最後だけ観ても面白いし、たぶん途中で観るのをやめても面白い。こういう作品が理想だと思う。

 2もある。そっちも面白い。

 アマプラだと字幕が読みづらいのが難点。

 

『スポットライト 世紀のスクープ』

 タイトル以外はすべてが完璧な映画。

 カトリック教会が神父の児童虐待を組織的に隠ぺいしていたことを描いた映画。主人公はそれを暴いた新聞社。

 タイトルはその新聞社が持つ、この暴露記事が掲載されたコーナーの名前なのだが、映画タイトルとしては最悪。まずスポットライトはコーナー名なので、虐待事件とは関係ない。過去には他の事件も扱ったはずだ。だから映画の内容を示していないし、この事件以外のスポットライトの記事すべてに対して失礼である。

 ただタイトルを除けばとにかく素晴らしい出来の映画なのでぜひ見てほしい。この一か月で見た中じゃピカイチだった。

 

『MIB』

 もう何度見たかわからないのにまた観る。

 何度見ても面白い。

 

『バックドラフト』

 未視聴だったので観る。さすが名作。面白い。

 こういう往年の名作エンタメ、「まあとにかく観とけ、損しないからマジで」というタイプの映画を満遍なく放映してくれたのがかつての日曜洋画劇場だった。『スピード』も『ダイ・ハード』も『ターミネーター』も『MIB』も『ミッション・インポッシブル』も『ロード・オブ・ザ・リング』も『BTTF』全部日曜洋画劇場で見た。

 あのときにもらった感動がおれを映画好きにした。

 今の子どもはいつ、何を、どうやって観て映画に触れるのだろう?

 懐古主義だと言われても、おれは日曜洋画劇場が好きだった。復活をいまも待ち望んでいる。

 金曜ロードSHOW!にはこれからも引き続き頑張ってほしい。

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